2008-01-01から1年間の記事一覧

2008年(簡単に。のちほど書き直します)

本年も有難う御座いました。 今年は岸田國士「紙風船」を四月にひっそりと公演しました。 小説の舞台化は安部公房『砂の女』で経験をしたことでしたが、人の書いた戯曲そのものを舞台にあげるのは初めてのことで、格闘のしっぱなしでした。 八月には第六回公…

「源平布引滝」

文楽十二月公演「源平布引滝」を観に行った。舞台のギミックといおうか、エンターテイメント部分は少なめで、しかしながら、恐ろしいぐらいの力量・熱量を発する物語内部にある人間関係のその奥行き。子供の無邪気なあだ討ちと、そのあとの戦争ごっこは凄す…

ぼやぼやしているうちに

十二月である。しかももう七日である。実は深夜なのでいま八日。タイトルどおりぼやぼやしていたわけではないが、結果ぼやぼやしていたのと変わらないような行動結果である。なんともはや。着々と『ファウスト第一部』の読解は進んでいる。バルバラのお話の…

モリエール

モリエールの『守銭奴』を読んだ。途中から大爆笑であった。しかしもう話を覚えていない。いい作品は往々にして感触だけを残して去る。パブリックシアターの「友達」がみたい。

能楽

「能楽事始」という企画に微力ながら関わっていて、その第二回の公演が行われた。久しぶりに能楽を観る機会であったのだけれど(おそらく半年ぶりぐらいか)、本当に素晴らしくて、それはもう身悶えしながら観ていたのだった。舞台芸術との共鳴の仕方として新…

新国立、三島由紀夫

先日、新国立に三島由紀夫の近代能楽集を観に行った。「綾の鼓」と「弱法師」それぞれ演出家が違い、両作もちろんいろは違う。そして考えたことも違った。 前田司朗演出の「綾の鼓」はあまりに古い。古いというのはおそらく演技のしかたである。たしかにまん…

「人形の家」

シアターコクーンに「人形の家」を観に行った。たいへん素晴らしかった。 さいごにヘルメルとノラが向き合って、ノラは全てを曝け出そうとしながら、そうして、ヘルメルは自分のなにかを守ろうとしながら、話し合う、あの崇高なシーンを、忘れることはないだ…

『赤と黒』、そして「運命」

スタンダール『赤と黒』を読んだ。誤訳問題で少し騒がれた野崎歓訳の光文社古典新訳文庫である。 「読んでない」と声を大にしていうことができないというような気恥ずかしさをつい感じてしまう小説を着々と読んでいこう計画第一弾である。本当のことをいえば…

「近頃河原の達引」

文楽を見に行った。「近頃河原の達引」は本当に素晴らしくて、幸せだった。三味線がよかった。ビル・エヴァンスの「Waltz for Debby」を聞いているときの快感と似ていて、一年前ぐらいまでまったくこのCDのよさが分らなかった自分は、ほんとうに哀しい。いろ…

そういえば

「ていうことは、てめぇには日常がないんだな」と言われたことを思い出した。『ドグラ・マグラ』を読み終わった。<これを読む者は一度は精神に異常をきたすと伝えられる、一大奇書>と裏表紙に書いてあったが、とりあえずいまのところ大丈夫だ。いや、もう…

宣言。

・川口オリジナルの新作脚本はしばらく上演いたしません。 ・次回公演では歌謡曲メインの選曲はいたしません。 ・演出家として(演出家だと認められるよう)、誠心誠意、高みを目指してゆきます。 どうぞ温かくそして厳しくご声援いただければと思います。

バッティングセンターとか

きのうはバッティングセンターに行った。集中していく自分がとってもよくわかって、スポーツはよい。というか、野球はよい。サンダルで行ってしまったがために裸足でバッティングしてしまって足が痛い。いや、ひさしぶりの運動で、全身が痛い。今日は借用物…

公演終了しました。

ご来場くださった皆様、本当にありがとうございました。最終日はいろんな人と交流できてよかったです。かなりの二日酔いに苦しみながら寝床で目蓋を開けたり閉じたりしていたのですが、そんななか少し気づくこともあった。それは又後日。とにかくいい公演だ…

本番五日目

芝居というのはやはりお客様に見ていただいてなんぼなもんだと実感しております。稽古の段階ではこのままお客様の前に放り出せる(放るというのは責任をおわないということでなく、役者を舞台に飛び立たせるというような意味です)と思っていても、芝居の本番…

本番中です

ご来場いただきました方々、誠に有難う御座います。 公演の評判も上々のようで嬉しい。惜しむらくは観客の動員が今現在かなり低いことだ。三本ともどれも骨太ないい作品に仕上がっています。心より多くのお客様のご来場お待ちしております。

明日は稽古休み。ラストスパート。

上野の対決展に行きそびれた。昨日の朝にどうにか行くつもりであったのだが…。すげぇ残念だ。蕭白、みたかった。昔古本で取り寄せた蕭白を見て気持ちを誤魔化す。他にもやりたいのにやれていないことがめちゃくちゃあって、そのうちの幾つかは実行したほうが…

稽古です。

稽古はうまくいったりうまくいかなかったり、まぁいろいろです。全体的に毎公演ごとにもちろん稽古の質も上がってきてはいる(と信じている)けれど、一方で、もっと多くのものを求めていきたくなっているので、結局演出の力量が追いつかない。いろんなかた…

爆笑問題の太田しゃんは

爆笑問題の太田しゃんは、亀井勝一郎の「青春論」に大きな影響を受けているのですね。爆笑問題の本を読んでいて知った。あと、太宰とか、ピカソとか、好きらしい。

―夏の終わりに師について考える―

「師」というものがなんなのか。「師」というものについてのある特別な感情の抱き方について自分が思っていることは、役者と共有できていない(すべての役者とと言う意味ではまったくないけれど)。自分が理解できていないことが役者と共有できていない、と…

駈込み訴え

小説の特異性というものは存在して、あ、特異性というより、やはりジャンルに特有の武器というものを最大限に生かされた作品というものがあって、それが「駈込み訴え」なのだなぁ、といまさら当たり前の発見をしているのである。「駈込み訴え」の朗読という…

小火(ぼや)とか

昨日稽古後の帰り道、最寄り駅から自宅への道が封鎖されていた。どうも近所の焼肉屋でボヤ騒ぎが起きたようである。ちょっと遠回りして帰らなければならず気だるくなる。周りにいた野次馬の方々が、まるで花火を見物しているかのような格好であった。鳥居み…

松尾スズキと「黒いオルフェ」

松尾スズキに特異な台詞術(過剰な会話の文体)はいったいどういう欲望に基づいているのか、というのはなににつけ気になる疑問であったのだけれど、松尾スズキの『宗教が往く』を読んでいて一つの可能性に気づいた。松尾スズキさんは「すべてに落とし前をつ…

koegadenai,,,,,,

今日は稽古を中止にしてしまった。役者の方々には大変申し訳ない。すまない思いで一杯である。まぁ、といいながら、できることといえば、本を読むことだったり、台本を書くことだったりするので少しずつ進める。 津村節子『智恵子飛ぶ』を三読目(たぶん)。…

雑記ツー

<隣><部屋><女>をキーワードにこのブログに到着した方がいるようだ。検索したときの欲望をわがブログは満足させられたのだろうか。まぁ、わが能力ではすこし難しいだろう。残念である。風邪をひいたら声がほとんど出なくなった。稽古場で囁き声で駄目…

雑記

「崖の上のポニョ」みたいあと嫌いな食べ物を克服するために、違う食べ物の味付けで誤魔化すのは、あまり意味ないと思う。これは雑記というか、雑記ではないけれど、国語学者の大野晋さんが亡くなられたようである。「日本語練習帳」は読んだことはないのだ…

「肉体の門」と「阿部一族」

鈴木清順監督作品「肉体の門」を観る。生きてるなぁ、ひとが、生きている。それを成り立たしめているのは、俳優や脚本や音楽の力はそりゃあるのだろうが、断トツなのは美術ではないだろうか。なんていうのだろうか、あのリアリティ。実際にはないのだけれど…

隣の部屋から聞こえてくるのは

隣の部屋から聞こえてくるのは、男たちの叫び声でも女たちの嬌声でもなく、熟年の方々のカラオケ稽古の声であった。今日の稽古場の話である。彼ら彼女が最後に唄っておられた曲が気になる。と、役者のひとりが聞いてくださった。秋元順子の「愛のままで」と…

「傷ついたほうが偉いと思ってる/人はあっちへ行って下さい」

枡野浩一の『石川くん』を読む。石川くんとは石川啄木のことであーる。枡野版「ひざまくらしてもらいつつ/俺がふと考えるのは/自分のことだ」(原文:「その膝に枕しつつも/我がこころ/思ひしはみな我のことなり」)楽しくって短時間で読み終わってしま…

稽古が始まっています。

三回ほど稽古をいたしました。ぼちぼち進んでいこうと思います。とりあえずは三本のうち、主に坂口安吾「霓博士の廃頽」からやっております。わりとうまく進んでいるんぢゃないかと、演出家は気楽な部分でそう思っています。今回の目標は「鋭く図式化せよ!…

坂口安吾とか、「なつかしさでいっぱい」

(最近引用ばかりですが、今回はとくに長いです。読みに来てくださっている奇特な方々、ご勘弁ください。下のほうには引用でなくコメントを書いています。) 関井 ……(柄谷さんの「『日本文化史観』論」においての)安吾の「ふるさと」を「他者」とする考え…