車谷長吉

車谷長吉『鹽壺の匙』のなかの「萬蔵の場合」を読む。

席がはてたあと、酔いが廻った頭の隅で、「世の中いうたらそんなもんやで」という、聞いた風な台詞を、私は思い浮べた。が、あとでこの「もん」は空恐ろしいと思った。わたしはこの「もん」を内側から喰い破ることばかりを考えて来た。