T.M.氏への手紙(にもならない駄文)

最初にお見かけしたのは京王井の頭線小田急線がぶつかる、雑多なひとびとがテンヤワンヤと乱れている下北沢の憩いのオアシス。「ヴィレッジ・バンガード」でございました。あなたの御本は、店員のお勧め本のなかでも、三島由紀夫舞城王太郎などの節操のないセレクションに混じって、まさに作中での『太陽の塔』のごとく宇宙から異性物として落下したかのような輝きを帯びておりました。しかし、そのときはなにを思ったか、懐に一抹の不安を抱えるわれわれ学生としては、やれ札を叩いて家に持って帰ろうという殊勝な行動にはでることができなかったのであります。次にお見かけしたのは、井の頭線の終点、つまりは始点である、いまだに律儀なハチ公がご主人をワンワンと待っている渋谷のブックファーストでございました。(中略)『夜は短し、歩けよ乙女』にでてくる黒髪の乙女にキュンキュンと胸がまさに鳴っております。聞いて下さい、この鳴きキュン。ああ、素晴らしきカナ!森見登美彦殿。もっと早くにあなたの本に出合えておればと、残念無念。偽電気ブランを探す旅に、ぜひご同行させていただきたい所存であります。