リアリズムについて

メモ。

ロシア・フォルマリズムの理論家シクロフスキーは、リアリズムの本質は非親和化にあるといっている。つまり、見慣れているために実は見ていないものを見させることである。したがって、リアリズムに一定の方法はない。それは、親和的なものをつねに非親和化しつづけるたえまない過程にほかならない。この意味では、いわゆる反リアリズム、たとえばカフカの作品もリアリズムに属する。リアリズムとは、たんに風景を描くのではなく、つねに風景を創出しなければならない。それまで事実としてあったにもかかわらず、だれもみていなかった風景を存在させるのだ。
柄谷行人日本近代文学の起源