二年前の自分を発見

踏み切りの前に立って、結局二年前と同じようなことを思っている自分を発見してしまったことへの後悔というのは、一年に一度ぐらい、鏡に映った自分をかっこいいと感じてしまうことへの儚げな後悔と似ているのだった。

ここに記述されたストーリーの部分は、上演されるべき全体にとっては、ほんの部分にすぎない。これは、ジャズに於けるコードネームのようなものにすぎないのである。劇は工事であり、演技は労働である。しかし劇はまた呪術であり、俳優は霊媒でもあることを忘れてはならない。記述された台詞の日常的な現実原則を、エロスの原則に換喩するために、肉体が呼び出される。
寺山修司『盲人書簡(上海編)』