酔っ払いの唄。

「帰途」

あなたの涙に 果実の核ほどの意味があるか
きみの一滴の血に この世界の夕暮れの
ふるえるような夕焼けのひびきがあるか

言葉なんて覚えるんじゃなかった
日本語とほんのすこしの外国語をおぼえたおかげで
ぼくはあなたの涙のなかに立ちどまる
ぼくはきみの血のなかにたったひとりで帰ってくる

田村隆一田村隆一詩集』)

酔っ払いにもなれない酔っ払いは、線路の上に胡坐をかくことすらできないで、血の涙も流さない。彼が流す涙に価値は無く、それはただの水ですらなく、汗ですらない。むろん、汗のほうが百倍ましだ。塩分の問題です。狂わんばかりのリアリティは、寝転んでいて手に入らぬものか。役に立たない唄を!